こんにちは西村です。
- 伴奏が難しい
- 暗譜ができない
- 作曲に使えるコード進行が知りたい
- 音楽の物語を考えたい
そんなお悩みありませんか?
実は、コード進行を学ぶことで音楽の物語を理解できます。
なぜなら、コード進行とは和音同士の横の繋がりのことです。繋がりがでることで、物語は生まれます。物語があることで、人々の感情は動き、記憶に残る音楽となります。
私は、小6から音楽理論を学び始め、作曲をしながらも吹奏楽系のコンクールで10回以上金賞を受賞し、国公立音大へ入学しました。現在は高校音楽にて音楽理論等を教育しています。
この記事では、コード進行の全容がわかるまとめ記事となっています。主に次のことが分かるようになります。
- D進行
- S進行
- 機能の代理
この記事を読むことで、コード進行が理解でき、次のことができるようになります。
- 各機能の進行先
- 機能からローマ数字へ変換
- 機能から各調のコードネームへ変換
- 各調のダイアトニックコード進行先
前回までのおさらい
音階の各音を根音とした和音は固有和音といいます。それぞれローマ数字が割り振られています。
ハ長調の固有和音
どんな長調も必ず、メジャー3つ、マイナー3つ、ディニッシュ1つで構成されています。
ドミナント進行
4度上(5度下)へ進行することをドミナント進行といいます。これが最も基本的な進行とされています。Ⅰから4度ずつ上に上がっていくと、6つの固有和音を経由しTへ戻ってきます。
ⅠはT(トニック)の機能を持ちます。そして全ての和音へ移動することができます。
Ⅰ以外の6つの和音は全てD(ドミナント)の機能を持ちます。そしてこのとき、4度上以外の和音へ進むことができません。Tへの距離に応じてそれぞれ数字がD、D2、D3と付けられます。
つまり、ドミナント進行は次の6種類で全てです。
- D → T
- D2 → D → T
- D3 → D2 → D → T
- D4 → D3 → D2 → D → T
- D5 → D4 → D3 → D2 → D → T
- D6 → D5 → D4 → D3 → D2 → D → T
次の重要な進行3つを聴いてみましょう。
D → T
最短のドミナント進行です。世の中で最も使われている進行といって間違いない。DはTへの期待感や調を確定させる機能があるため、セブンスが基本的に使われる。Tは安定感を求めるため、セブンスや転回形はあまり使われない。
D2 → D → T
こちらもジャンルを問わず、非常に良く使われる。ジャズやポップスでも「ツーファイブワン」とよく言われている進行。ⅤはもちろんⅡもセブンスがしばしば使われる。
D6 → D5 → D4 → D3 → D2 → D → T
最長のドミナント進行です。ドミナント進行の全容を理解するためにも1度は聴いておきましょう。
サブドミナント進行
5度上(4度下)へ進行することをサブドミナント進行という。つまりドミナント進行と逆の方向へ移動することになる。ドミナント進行に比べて進行感が薄く、優しい響きがあると言われている。
Ⅰは変わらずT(トニック)の機能を持ちます。そして全ての和音へ移動することができます。
Ⅰ以外の6つの和音は全てS(サブドミナント)の機能を持ちます。そしてこのとき、5度上以外の和音へ進むことができません。Tへの距離に応じてそれぞれ数字がS、S2、S3と付けられます。
つまり、サブドミナント進行は次の6種類で全てです。
- S → T
- S2 → S → T
- S3 → S2 → S → T
- S4 → S3 → S2 → S → T
- S5 → S4 → S3 → S2 → S → T
- S6 → S5 → S4 → S3 → S2 → S → T
この内重要な2つを聴いてみましょう。
S → T
これはアーメン終止(変終止)とも呼ばれています。教会楽曲の最後にアーメンのタイミングで使わていたためです。現代でもジャンル問わず使われています。
サブドミナント進行はこれ以外はあまり使われていません。その理由はⅤやⅦを聴くと「ドミナントだ」という印象が強く、サブドミナントとしての機能が負けてしまい違和感につながるからです。(Ⅶがドミナント機能が強い理由は後述します。)Ⅶは早々「S2」に使われるため、Sまでが使われるということです。
S6 → S5 → S4 → S3 → S2 → S → T
最長のサブドミナント進行です。全容を理解するためにも1度聴いてみましょう。
コードの代理
三和音と七の和音が同じ機能を持つことは既に周知の事実ですよね。もう一つ機能が変わらないルールが存在します。
それは「根音を省略してもいい」ということです。
え?根音は一番大事じゃないの?と思われましたよね。
根音は大事がゆえに、鳴っていなくとも人は想像することができるのです。
「セブンスは同じ機能を持つ」ことと、「根音を省略してもいい」ということを組み合わせると、別の和音が同じ機能を持つことができます。
こういった代理和音といいます。基本的な4つを解説します。
- ⅦはⅤのDを代理することができる。
- ⅣはⅡのD2を代理することができる。
- ⅥはⅠのTを代理することができる。
- ⅢはⅠのTを代理することができる。
1つずつ聴いてみましょう。
ⅦはⅤのDを代理することができる
※ Ⅴに/は根音省略形を表します。
上の図からⅤのセブンスの根音省略形がⅦと一致することが分かる。これらを聴くとドミナントの機能が強く意識されるため、Ⅶはドミナントの機能を持つことができる。
Ⅶ本来の機能はD5でしたが、これによってDにⅦを使うことができるのです。むしろ、D5の登場頻度は少なく、Dの機能が強いため、ⅦイコールDと認識してしまう程です。
逆に、ⅤがD5の機能の代理をすることはまずありません。そのため、実際はⅦ≒Ⅴというよりは、Ⅶ⊂Ⅴのような、ⅦはⅤと言えるが、ⅤはⅦとは言えない形を取っています。
ⅦがDのときの実際の使われ方
ⅣはⅡのD2を代理することができる。
上の図からⅡのセブンスの根音省略形がⅣと一致することが分かる。つまり、ⅣはD2の機能を持つことができる。
このことから、ⅣはSとD2の両方の機能を持っています。そのため、S≒D2となるため、SからDへ移動できると、説明するサイトや書籍も多いです。しかし、本質はSはTへしか移動できません。Dへ移動したのなら、それはD2と分析する必要があります。
ⅡがD2のときの実際の使われ方
ⅥはⅠのTを代理することができる。
上の図からⅥのセブンスの根音省略形がⅠと一致することが分かる。これらを聴くとトニックの印象が強く出るため、ⅥはTの機能を持つことができる。
このⅥは偽終止と呼ばれています。ドミナントが鳴り、Ⅰを期待した聴者にⅥが鳴ることで、意外性があり偽物の終止となるのです。
ⅥがTのときの実際の使われ方
ⅢはⅠのTを代理することができる。
上の図からⅠのセブンスの根音省略形がⅢと一致することが分かる。これらを聴くとトニックの印象が強く出るため、ⅢはTの機能を持つことができる。
これは、クラシックではあまり使われない。それは、Ⅰのセブンスがそもそも使われないからです。しかし、現代の曲やポップスではⅠのセブンスが使われることも増えたため、使われることが増えてきました。
ⅢがⅠのときの実際の使われ方
和声・ボイシング
和声法とはコード進行の中で各音の配置を考えよう、という理論です。
例えばTDTを「バス・テノール・アルト・ソプラノ」の4声で配置してみましょう。
固有和音で説明した形をそのまま使った非常にシンプルで理解しやすい配置です。しかし、これは美しくないと言われています。いくつか原因はありますが、最も大きな原因は各声部が独立していないことです。
全ての音が同じように動いていますよね。それによって、デコボコした印象になってしまいます。
ですので次のように、バスが上がったら、テノールは下がる、など独立した動きが大切です。
いかがでしょう。後者の方が聴きなじみが良く、美しくないですか?
コードや機能は全く変わっていませんが、配置によって印象は変わってきます。
限定進行
次の音がほぼ確定している場合があります。
特に重要な限定進行はⅤ7からⅠへ進行するときに現れます。それは、
- Ⅴ7の第3音が2度上行すること
- Ⅴ7の第7音が2度下行すること
例えば、次のようにこれらを無視してしまうと、違和感を感じませんか?
これらは、Ⅴ7の不協和音によって「近くの安定した音へ向かいたい」という力が働くためです。
このように限定進行を知っていることで美しい音楽を作曲できるだけでなく、演奏するときも音の持つ力に合わせた表現をすることができます。
まとめ
コード進行は次の4つを分けて理解するとより実用的になります。
- 各機能の進行先
- 機能からローマ数字へ変換
- 機能から各調のコードネームへ変換
- 各調のダイアトニックコード進行先
ひとつずつ見ていきましょう。
各機能の進行先
- Tはどの和音へも進むことができる。
- DはDかTへ進む。
- SはSかTへ進む。
- D2はD2かDへ進む。
機能からローマ数字へ変換
- Tの機能を持つ和音: Ⅰ、Ⅵ、(Ⅲ)
- Dの機能を持つ和音: Ⅴ、Ⅶ
- D2の機能を持つ和音: Ⅱ、Ⅳ
- Sの機能を持つ和音: Ⅳ
機能から各調のコードネームへ変換
今回はハ長調の場合です。
- Tの機能を持つ和音: C、Am、(Em)
- Dの機能を持つ和音: G、Bdim
- D2の機能を持つ和音: Dm、F
- Sの機能を持つ和音: F
各調のダイアトニックコード進行先
今回はハ長調の場合です。
- Cは全ての和音へ進むことができる。
- DmはGへ進む。(同じD2だが、Fへは進めない。)
- Emは全ての和音へ進むことができる。
- Fは前後の状況によりCかDmかGへ進む。
- GはBdimかCかAmかEmへ進む。
- Amは全ての和音へ進むことができる。
- BdimはGかCかAmかEmへ進む。
もちろん例外は沢山ありますが、それは発展した理論なのか、分かっていて破っているのか、無知だから破っているのか、その理由によって作品の深さが変わってくるでしょう。
- D進行
- S進行
- 機能の代理
- 王道進行
- カノン進行
- 小室進行