こんにちは。音楽家の西村です。
皆さんは音名のことをどれ程知っているでしょうか。ドレミだけしか知らない人はぜひ読み進めてください。
音名について知らないということは経営で例えると、部下の名前も知らない、所属している部署もしらない、出身地や経歴も知らない、そんな部下達をまとめ上げて経営しようとしている状態です。そんなリーダーに着いて行きたくはないですよね。
演奏家や作曲家も同じです。音たちはそれぞれ名前があり、役割があり、生まれた経歴があります。そんな音たちをまとめ上げるのが音楽家なのです。名前を覚えることはその子たちを認識し、音楽の可能性を広げるための第1歩目です!
音名とは
音名とはその名の通り、音の名前のことです。音1つ1つに名前があり、一般的にはドレミファソラシドと呼ばれていますよね。
では、みなさんはドレミは何語か知っていますか。
実はイタリア語なんです。バッハやベートーヴェンよりも昔はイタリアで音楽が栄えており、イタリア語の曲の歌詞から取ってUt Re Mi Fa Sol La と名付けられたと言われています。
では♯(シャープ)や♭(フラット)は何語でしょうか。
実はイタリア語ではないのです。
変化記号とは
♯や♭、♮を変化記号と呼びます。これらの意味をおさらいしておきましょう。
記号 | 呼び方 | 意味 |
---|---|---|
♯ | シャープ | 半音上げる |
♭ | フラット | 半音下げる |
♮ | ナチュラル | 幹音で |
変化記号がついた音のことを派生音(はせいおん)と呼びます。
逆に変化記号がついていない音のことを幹音(かんおん)と呼びます。
そして実は、これらは変化記号は英語なのです。
私たちは「ドのシャープ」と呼ぶとき、イタリア語と英語を混ぜて喋っているのです。
ちなみにイタリア語で♯をdiesis(ディエージス)、♭はbemolle(ベモッレ)と呼びます。これらは、日本ではほとんど使われていません。
音名を英語で覚えよう
ドレミファソラシドという音名を英語で表すときは、CDEGFGABCとなります。
読み方はアルファベットのまま、シー、ディー、イーと呼びます。
ここで、なぜAから始まらないのかという疑問が湧くのではないでしょうか。
それはドが中心となる音楽よりも前に考案されたからです。
諸説ありますが、人間が出せる最も低い音から順にABCとされていたとされています。
男性の平均最低音はソの音とされ、その音をγ(ガンマ)と特別に呼びました。そして、その1音上のラを基準にAとされていたのです。ガンマの存在で逆にややこしいですね。
そして、ラを基準にした音楽だけでなく、シもドも全ての音を基準にした音楽ができていきます。その後現代では、使い勝手や聴き心地がよかったドを基準にした長調が主流となっているのです。
英語はジャズやPOPsなど英語圏で発達してきました。そのため、それらを学ぶときは英語を使って説明されることが多いです。Cメジャーコードなど和音を学ぶ上でも欠かせません。ましてや世界共通語です。音楽を理解する上で必ず知っておく必要があります。
幹音を英語で覚えよう
それぞれの音を英語でも読めるようにしておきましょう。
派生音を英語で覚えよう
変化記号は英語でしたので、「ドのシャープ」を英語で言うと「シーシャープ」となります。表記はそのままC#です。
変化記号の形の由来
♮や♭はどこからやってきたのでしょうか。実は元は同じなのです。言われてみれば形が似ていると思いませんか。
その由来はアルファベットの「b」からきているのです。
実は、シの音は不協和音になりやすく昔は避けるべき音程として扱われてきました。ですが、シを少し低くすると心地よくなることもあり、bの音(シ)は高くなったり、低くなったりと高さが定まっていませんでした。その後、両者を呼び分けるために高いシを「角張ったb」、低いシを「丸まったb」と呼ぶようになります。
それが発達していき、bを角ばらせると♮に、bを丸めると♭のような形に変化していったのです。そのため、最初は♭や♮は記号ではなく、音名そのものだったのです。それから時代は流れ、変化記号として扱われ、全ての音に♮や♭を付けることができるように発達したのです。
最初に鍵盤楽器(ピアノのような楽器)が作られたときには黒鍵はシの♭しかなかったそうです。
そしてさらに角ばらせていき♮が♯へと変化していきます。まさにsharp(鋭い)な見た目になっていますよね。実際の音も高くなると鋭くなっていると感じる人が多いようです。
音名を日本語で覚えよう
ドレミファソラシドがイタリア語だとしたら、日本語は何なのでしょうか。
それは、ハニホヘトイロハです。
英語が定着してから日本へ輸入されていますので、Aであるラを基準にイロハニホヘトと読んでいます。そして、ドの音から読むとハニホヘトイロハとなるのです。
初めて知った方もいるかもしれませんが、実は 🎼 ト音記号の「ト」や交響曲第◯番 ハ長調の「ハ」など、イタリア語だけでなく日本語も日常的に使われています。
音楽理論を学ぶためにも、日本人としても、日本語を覚えておくことが大切です。
幹音を日本語で覚えよう
このようにハから始まると覚えれば問題ありません。
派生音を日本語で覚えよう
日本語では♯を嬰(えい)記号、♭を変記号と呼びます。
ドのシャープを日本語で呼ぶときは嬰ハと呼びます。
音名をドイツ語で覚えよう
昔はイタリアが音楽の場であったことは前述の通りですが、その後ドイツにて大きく発展していきます。バッハ、ベートーヴェン、モーツァルトなど彼らは皆ドイツ人です。そのことから、日本でもクラシックや吹奏楽の業界では日常的にドイツ音名で会話をしています。
クラシックに興味がある方は覚えておきましょう。POPsやジャズでは使うことは少ないでしょう。
幹音をドイツ語で覚えよう
ドレミファソラシドをドイツ語で表記すると、CDEFGAHCとなるのです。英語と同じかと思いきや、Bが無く、Hになっているのです。
これは前述した「角張ったb」と「丸まったb」が関係しています。
bを角ばらせていくと♮へと変化しているのですが、印刷技術が開発されたときに「♮」ではなく「h」と印刷されたそうです。たしかに言われてみれば似ているでしょうか。そしてシの♭は「b」と表記されたのです。
派生音をドイツ語で覚えよう
上記のことからドイツ語ではシの♭はBと表記します。
それ以外の派生音は後に作られました。
♯は音名後ろにisを付け、♭はesを付けます。ドのシャープをドイツ語でCis、ドのフラットはCesというふうにです。
例外として、ラのフラット「As」とミのフラット「Es」はeが省略されています。母音が続くことで言いにくいからです。
ドイツ語では例外が3つあると覚えておきましょう。
幹音の音名表
イタリア | ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ |
英語 | C | D | E | F | G | A | B |
日本 | ハ | ニ | ホ | へ | ト | イ | ロ |
ドイツ | C | D | E | F | G | A | H |
♯が付く音名表
イタリア | ド diesis | レ diesis | ミ diesis | ファ diesis | ソ diesis | ラ diesis | シ diesis |
英語 | C♯ | D♯ | E♯ | F♯ | G♯ | A♯ | B♯ |
日本 | 嬰ハ | 嬰ニ | 嬰ホ | 嬰へ | 嬰ト | 嬰イ | 嬰ロ |
ドイツ | Cis | Dis | Eis | Fis | Gis | Ais | His |
♭が付く音名表
イタリア | ド bemolle | レ bemolle | ミ bemolle | ファbemolle | ソ bemolle | ラ bemolle | シ bemolle |
英語 | C♭ | D♭ | E♭ | F♭ | G♭ | A♭ | B♭ |
日本 | 変ハ | 変ニ | 変ホ | 変へ | 変ト | 変イ | 変ロ |
ドイツ | Ces | Des | Es | Fes | Ges | As | B |
楽譜に音名(ドレミ)を書いて練習してもいい?
私はおすすめしません。
カタカナを見ながら演奏することは上達するでしょうが、楽譜を見ながら演奏することには繋がりません。それではいつまで経っても読めるようにはなりません。譜読みスピードは上達速度と同じです。ゲームで言うところの経験値UPバフです。早いうち、レベルが低いうちに身に着けた方がおトクですよね。
まとめ
イタリアで基盤が作られ、ドイツで発達しました。そして、平均律という概念が確立されました。平均律とは1オクターブを均等に12分割するという方法です。これにより鍵盤の黒鍵が5つとなり後から音名が与えられました。ドイツ語ではbとhという名で複雑化していますが、分かっていても世に伝わった習慣を変えることは難しいのです。
それらが英語圏へ渡ったときに、合理化されシの音がBと変更されたのです。まだ習慣がなかったからこそ変えられたのでしょう。
それら全てが日本へと輸入されているため、より複雑化している背景があります。
時代背景を知ることで、複雑なことも見えてきたのではないでしょうか。
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